オスロでの生活

若かりし日々の追想

社会主義から自由主義へ

 私の旅はモスクワに二泊、レニングラードに二泊し、鉄道でフィンランドの首都ヘルシンキに到着した。スカンジナビア半島はフィンランド、スウェーデン、ノールウェー、そしてデンマークの四カ国で構成される。社会主義のロシアから自由主義に入ってなんともいえぬ開放感で満たされた。人々の顔立ち町に溢れる自由な空気に触れたとたん抑圧された心が一度に開放された思いがした。ヘルシンキからバルト海を横切りストックホルムに入り、次いでデンマークのヘルシンガーに到着する。ここで十月からの秋季タームの入学の手続きをとる。日本からの重いトランクを学校のベースメントに預けリックサック一つと身軽になってヒッチハイクをはじめる。そしてノールウェーのオスロを目指す。

森の中の湖

 ノールウェーは一番北に位置した所にオスロ首都がある。到着した頃は夏の盛りで私が滞在していたユースホステルにはたくさんの若者が集まってきて夜はダンスパーティとにぎわった。ユースの前が広々とした芝生の公園で開放的な気分に浸れる。ビートがきいた音楽がスピーカーから流れ競って美しい娘さんをパートナーにと…若者の笑いで交錯した。
 ある日ユースの裏の山に散策にでかける。細い山道を登って行く途中に突然目の前に湖が現れた。そこはぽっかりと木々の緑に深く染まった神秘的な湖であった。突然自分との戦いみたいなものが湧いてきた。それはひとつの肝だめし的なものだ。誰もいない湖に静かに水に入る。恐怖感に包まれながらも負けないぞと力を入れ泳ぎはじめた。ひんやりとした水が肌を刺す。北国の短い夏、針葉樹林の湖に一人泳ぐ。ひとつの思い出を刻んだ。ユースホステルの芝刈りなどをして私は宿泊費を免除されながらWriterになった気分で数日間を過ごさせてもらった。
 その後、新婚旅行でもう一度このユースホテルに宿泊する機会があった、当日は宿泊客が多く部屋は全ていっぱいとのこと、簡易ベッドでもよければという条件で宿泊した。僕にはとても懐かしい思い出のユースホステルである。
To be continued